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『子規句集』と『子規の俳句』 ②

季語のいくつかを頭に置いて、虚子選『子規句集』と大岡信選『子規の俳句』を読み比べてみました。
代表的な季語、例えば

   「桜」を詠んだ句は
虚子51句、大岡氏22句 を選んでいますが、二人が重複して選んでいる桜の句は 
   2句しかありませんでした。

吾は寐ん君高楼の花に酔へ
寝て聞けば上野は花のさはぎ哉

   「柿」については
虚子20句 大岡氏28句 を選んでいますが重複する句は9句です。

渋柿やあら壁つづく奈良の町
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
柿くふや道灌山の婆が茶屋
渋柿は馬鹿の薬になるまいか
つり鐘の蔕のところが渋かりき
御仏に供へあまりの柿十五
三千の俳句を閲し柿二つ
樽柿を握るところを写生哉
柿もくはで随問随答を草しけり

   子規の「柿」には特に興味がありました。
   虚子が選んだ
  
柿くふも今年ばかりと思ひけり   

   を選ばずに大岡氏は一連の「胃痛八句」をまとめて選んでいます。明治32年に詠まれた八句です。

胃を病んで柿をくはれぬいさめ哉
側に柿くふ人を恨みけり
盗みくふ林檎に腹をいためけり
柿もくはて随問随答を草しけり   (虚子との重複句)
柿あまたくひけるよりの病哉
柿くはぬ病に柿をもらひけり
柿くはぬ腹にまぐろのうまさ哉
癒えんとして柿くはれぬそ小淋しき


生きることの具体的な営みである食、「胃痛八句」には子規の日常のつぶやきとため息が
漏れています。生きるために食し食することが生の証であった「病牀六尺」の世界が見えて
来ます。健啖家と言われた子規、子規の旺盛な精神力と天性の明るさ、それを思いながらも
病床の子規の顔が見えてきて少し切ない気持ちになります。

「子規の姿がありありと感じられる句集」という大岡氏の視点を再確認した八句です。




参考図書 『俳句的生活』 長谷川櫂著 中央公論新社
       『子規句集』 高濱虚子選 岩波文庫
       『子規の俳句』 大岡信選 増進会出版社
       『回想子規・漱石』 高濱虚子著 岩波文庫 
       『子規全集』  講談社 

                               (千惠子)
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by hakusanfu-ro | 2014-04-28 07:03

子規の「平気」~『子規句集』と『子規の俳句』 ①

 高濱虚子選『子規句集』  (昭和16年刊行) 2306句
 大岡信氏選『子規の俳句』 (平成14年刊行) 1400句

両氏の重複選句は約330句しかないそうです。 そこに着目して長谷川櫂氏は「滑稽家」正岡子規の
考察を深めました。
それぞれにどんな俳句が収められているのか、気になって、長谷川氏の「平気」の出典『俳句的生活』
を読んでみました。
選句の違いを考察し、その顕著な例として10句ずつ掲載されている虚子と大岡氏の選句例を書き出
してみます。

[虚子だけが選んだ子規の俳句の例]   

  青々と障子にうつるばせを哉
  箕笠を蓬莱にして草の庵
  名月や彷徨としてつくば山         
  政宗の眼(めだま)もあらん土用干    
  白萩のしきりに露をこぼしけり       
  絶えず人いこふ夏野の石一つ       
  春や昔十万石の城下哉
  ほろほろとぬかごこぼるる垣根哉
  砂の如き雲流れ行く朝の秋
  黒きまで紫深き葡萄かな 
     


 [大岡氏だけが選んだ子規の俳句の例]

 茗荷よりかしこさうなり茗荷の子                 
 ずんずんと夏を流すや最上川        
  春雨のわれまぼろしに近き身ぞ
  ひとり寐の紅葉に冷えし夜もあらん
  唐辛子からき命をつなぎけり
  竹の子の子の子もつどふ祝かな
  鶏頭の十四五本もありぬべし
  朝がおヤ絵ノ具ニジンデ絵ヲ成サズ
  枝豆ヤ三寸飛ンデ口ニ入ル
  糞づまりならば卯の花下しませ

長谷川氏は両氏の選を比較して
 
 虚子の選句は、自分が受け継いだ俳句の大道、笑いを排してリアリズムに徹する原則に沿っている。
 その結果、真面目な句を選ぶことになった。
 大岡氏の選句は原則を度外視して自分のおもしろいと思う心の動きを拠り所にしている。

と書いています。

高濱虚子は道灌山で「後継者になってほしい」という子規の申し出を断り「一小虚子」の立場を固持し 
ましたが、子規の亡きあとに俳句復帰を遂げました。河東碧梧桐の「新傾向俳句」に対して
子規以来の正統な俳句を守る立場に立ったのです。昭和16年の『子規句集』刊行時、虚子は既に
大正昭和の俳句界の中心的存在でした。その立場からの選句ということです。


一方の大岡氏は句集『子規の俳句』のあとがきで、
従来の『子規句集』にとらわれず「子規の精神活動が活発に営まれている姿がありありと感じられる
句集を念願した」と記し、子規の句の軽やかさを指摘しています。

そして大岡氏は2万数千句を通読して痛感したこととして

 病牀に縛りつけられてなお弾力性を持ち軽快な精神活動を続けた子規の精神の元気の良さ、
 それを支えた大きな要素は子規の想像力の活発な働きであること、
 根底に軽快に働く想像力があってこそ、写生や写実というものも陰影豊かな力になって実力を
 発揮するものだ。

と結んでいます。


 参考図書 『現代文精選』 東京書籍
        『俳句的生活』 長谷川櫂著 中央公論新社
        『子規句集』 高濱虚子選 岩波文庫
        『子規の俳句』 大岡信選 増進会出版社
        『回想子規・漱石』 高濱虚子著 岩波文庫 
                              
                                            (千惠子)
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by hakusanfu-ro | 2014-04-17 10:24


正岡子規に学ぶ


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